ねこ半纏(南木曽ねこ)の作り方|材料の選び方から仕立てまでを解説
「ねこ半纏」という呼び名は、赤ちゃんをおんぶするときに羽織る「ねんねこ半纏」の略称として使われることもありますが、長野県南木曽町をはじめ信州南部に伝わる、袖のない防寒着「南木曽ねこ」を指して使われることもあります。ねんねこ半纏については半纏の別名で解説していますので、ここでは南木曽ねことしての「ねこ半纏」の作り方を、材料の選び方から型紙の裁断、真綿ともめん綿を重ねる工程、衿と紐を付けて仕上げるところまで順番に解説します。
「ねこ半纏(南木曽ねこ)」とはどんな衣類か

南木曽ねこは、長野県南木曽町を中心とした信州南部の山間地に伝わる、袖のない防寒着です。かつて養蚕が盛んだったこの地域では、繭から糸を取ったあとに出荷できなかった繭で真綿をつくり、着物をほどいた古布と、もめん綿・真綿をあわせて使い、農家の女性たちが家族のために「ねこ」を仕立ててきたといわれています。袖がなくさっと羽織れて、背中からやさしく体全体を温めてくれる軽さと暖かさが特徴で、厚みのある綿入れの「どてら」や「丹前」とは、袖がない分動きやすい点で性格が異なります(どてら・丹前との違いは半纏とどてらの違いでも解説しています)。山仕事や農作業で荷物を背負う場面でも、袖がない分、腕や肩の動きを妨げにくかったと考えられています。さっと羽織るだけで着られる服として、現在も地域の手作り教室などで仕立て方が受け継がれています。
材料をそろえる(古布・真綿・もめん綿・紐)

表地には、着物をほどいた古布がよく使われます。木綿や紬など、着物の生地をそのまま活かせる点は、着物の生地を解いて半纏に仕立て直す着物リメイクで作る半纏の考え方と共通しています。着物1着からとれる布地の量を目安に、どの部分を身頃に使うかを決めると、柄の出方も考えながら配置しやすくなります。古布が用意できない場合は、木綿や和の風合いの生地で代用してもかまいません。
中綿には、もめん綿と真綿(絹わた)の2種類を使い分けます。真綿は、近江真綿のように片面に加工がされ、布のように薄く伸ばしやすくなっているものもあり、仕立てによって量を増やしたり、もめん綿だけで仕立てたりと配合を変えることもできます。手芸店やハンドメイド用の通販サイトでもそろう材料です。このほか、衿を立体的に仕立てるための接着芯、紐にする細幅の布、ミシンや手縫いの道具一式があれば、特別な洋裁(ソーイング)向けの道具をそろえなくても十分です。
型紙を用意して裁断する

南木曽ねこの型紙は、身頃を一枚の長方形として裁ち出すのが大きな特徴です。肩の位置で生地を二つ折りにし、首元から脇にかけてゆるやかな曲線を描くように袖ぐりを裁つだけで、袖を別に作って縫い付ける工程がありません。身幅と丈は、背中にメジャーを当てて肩幅と羽織りたい長さを測ることから決めます。袖付きの型紙を使う半纏の作り方とは異なり、パーツ数が少ない分、裁断そのものは洋裁に慣れていない方でも進めやすい作業です。
衿は別布で用意し、中心の折り目を身頃の背中心に合わせて裁ち出します。布目(生地の織り糸の方向)に沿わせて型紙を置き、合印をチャコペンで写してから裁断します。はさみで生地を切るときは、刃先ではなく歯元のほうを使うとまっすぐ裁てます。この裁断の進め方は通常の半纏と同じです。
真綿ともめん綿を重ねて中綿を入れる

中綿を入れる工程が、ねこ半纏作りで最も手がかかり、仕上がりを左右する部分です。裁断した表地の上に、まずもめん綿を均等な厚みに敷き詰め、その上から真綿を手で薄く引き伸ばして重ねていきます。真綿は繊維がつながっているため、一方向にだけ引くと偏ってしまうので、少しずつ四方に引き伸ばしながら、生地の端まで均一な厚みになるよう整えるのがポイントです。
もめん綿と真綿を2層にすることで、もめん綿だけで仕立てるよりも軽く、真綿だけで仕立てるよりも真綿の使用量を抑えて仕上げられます。綿を広げ終えたら、裏地を重ねてまち針で動かないようにとめ、身頃の要所を糸で点々とじて綿のずれを防ぎます。綿を均等な厚みで入れるコツは綿入れ半纏の作り方でも解説しているので、あわせて参考にしてください。
身頃を縫い合わせ、衿と紐を付けて仕上げる

綿を入れて3枚重ねにした身頃は、脇と裾を縫い合わせてから、表に返して形を整えます。袖がない分、脇の縫い目をまっすぐ縫えているかどうかが、羽織ったときのシルエットに直結するので、縫う前にまち針でしっかり固定しておきましょう。衿は、接着芯を貼って立体感を出してから中表に縫い合わせ、表に返して身頃の衿ぐりにまつり縫いで縫い付けます。
最後に、脇の少し下、結びやすい位置に紐を返し縫いで付ければ完成です。紐の長さは、着る人の体格に合わせて調節できます。縫い代の端は、ジグザグミシンで始末するか、生地の端を内側に折る三つ折りで始末しておくと、長く着てもほつれにくくなります。
自分で作るのが難しいと感じたら

南木曽ねこは、パーツ数が少なくミシンでも縫える仕立てですが、真綿を均等に広げる工程は、和裁の経験がなくてもコツをつかむまで時間がかかる作業です。古布の量が足りない、綿の偏りがうまく直せないなど、手作りで難しさを感じたときは、無理に仕上げようとせず、一度手を止めて見直すのも一つの方法です。半纏たかやでは、南木曽ねこそのものの仕立てはお作りしていませんが、お祭りやチームで着る通常のオーダーメイド半纏もご検討ください。法被の製作も承っています。生地や丈、紋や名入れの内容をご相談いただきながら、初回5着からお作りしています。
「ねこ半纏(南木曽ねこ)」に関するよくある質問

ねこ半纏とねんねこ半纏は同じものですか。
いいえ、別のものです。ねこ半纏(南木曽ねこ)は信州南部に伝わる袖のない防寒着で、ねんねこ半纏は赤ちゃんをおんぶしたまま羽織れるよう背中側を大きく仕立てた半纏です。呼び名が似ているため混同されやすいですが、形も用途も異なります。ねんねこ半纏については半纏の別名で詳しく解説しています。
南木曽ねこに使う真綿ともめん綿はどこで手に入りますか。
真綿は手芸店やオンラインショップで、近江真綿のように布状に加工されたものが販売されています。もめん綿は手芸用の綿として広く販売されているため、どちらも専門店でなくても用意しやすい材料です。
ミシンがなくても南木曽ねこは作れますか。
身頃が長方形に近い形のため、直線を縫う工程が多く、ミシンがなくても返し縫いなどの手縫いで仕立てることは可能です。ただし綿を入れたあとの3枚重ねを縫う工程は厚みがある分、時間がかかります。
南木曽ねこと綿入れ半纏はどう違いますか。
どちらも中に綿を入れて仕立てる防寒着ですが、南木曽ねこは袖がなく、身頃を長方形から裁ち出す仕立てです。綿入れ半纏は通常の半纏と同じ袖のある形に綿を入れるため、袖を縫い付ける工程が加わります。綿入れ半纏の作り方は綿入れ半纏の作り方で解説しています。
半纏づくりのご相談は、半纏たかやへ
オリジナル半纏の製作は5着から承ります。デザインが決まっていなくても、ロゴ、使いたい色、参考画像、使用する場面など、手元にある資料からご相談いただけます。